
金庫破りの謎解き旅行(アシュリー・ウィーヴァー/創元推理文庫)
『金庫破りときどきスパイ』シリーズの第三作。
主人公は上司のハンサムな少佐から、詳細を知らされないまま北部の町への旅を指示される。現地に着いてすぐに、背後から誰かにぶつかられ、危うくトラックに惹かれそうになるが、親切な男性に助けられる。しかし、数時間後に、その男性は不審な死を遂げる・・・
前作について、恋愛要素も交えたコージーミステリ風のスパイ小説、と紹介した。今作も基本的には同様なのだが、主人公の向こう見ずな性格が招くハラハラドキドキの加減が絶妙。(しかも、男性なら勇気と称賛されるはず、という主人公の主張には説得力がある。)
改めてこのシリーズの魅力について考えてみた。諜報活動の舞台をナチスドイツの空襲を受けるイギリスに設定するというのは、スパイ小説が明らかに行き詰まっている中で、新たな可能性を模索する試みではないだろうか。そして、金庫破りというのは、ハニートラップではない女性の役割として、斬新なアイデアではないだろうか。
というようなことを何も考えずに、気楽に楽しむのが正しい読み方だと思う。
原作は第4作もすでに書かれているようだ。